不動産の売却理由は様々です。「急な転勤でマンションを売ることになった」「投資用マンション相場が値上がりしたから売ることになった」など、生活環境や不動産市況の変化によって売却するタイミングも様々です。
そして、その不動産が戸建てなのか、またはマンションなのか、もしくは土地なのか、種別も様々存在します。
しかし、不動産売却はすべて同様の手順で行われます。本記事では、マンションをはじめて売却する方、または将来売却する可能性がある方に向けて、マンション売却までの流れとポイントを解説していきます。

One point advice

売却完了までの期間は、物件の状態や諸条件によって大きく異なります。早ければ1ヶ月、長ければ数年を要する場合もあります。
また、売却にかかる諸費用も、住宅ローンの残債有無などの状況により変わります。不動産会社へ相談される前に、まずは「いつまでに売る必要があるのか」「手元にいくら残れば良いのか」ということを、ご自身で整理しておきましょう。
なお、債務超過により売却する場合においては、「任意売却制度」があります。諸条件をクリアする必要はありますが、裁判所が強制して行う競売と違い、ご自身のプライバシーが守られ、さらに売却活動も一般的な物件と同様に行うことができることから、市場価格により近い金額で売却することが可能と言われています。

物件査定

Assessment

具体的な売却活動に入る前に、まずはご自身のマンションがどの程度の価格で売れるのかを確認しましょう。 そのために行うのが「物件査定」です。
物件査定は不動産仲介会社に依頼します。なお、査定には「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。

机上査定

おおまかな査定価格を知りたい場合は、マンションの所在や階数、部屋の広さなど基本的な内容を伝えて机上査定を依頼します。
最近は、インターネットから複数社同時に査定依頼ができる「一括査定」が増えています。
一括査定を依頼することも一つの手段ではありますが、机上査定は一定のルールに従って価格を算出することから、原則的に不動産会社によって著しく査定価格に差が出ることはありません。
また、不動産会社によっては、机上査定後に営業連絡が頻繁にかかってくることもあります。
机上査定に関しては、まずはCMでよく目にするような、大手の不動産会社を1社もしくは2社程度に依頼することで十分です。
机上査定は、早ければ依頼当日に提出してもらえます。内容を確認し、より具体的な査定価格を算出する場合は訪問査定へと続きます。

訪問査定

訪問査定は、不動産会社の担当者に来訪してもらい、マンションの周辺環境や部屋内部の状況を細かく見てもらうことで、具体的な査定価格を算出することが可能です。
ここで算出された査定価格は、「早期の売却が必要な場合」と「売却期間が長くなっても良い場合」、少なくとも2通りを不動産会社から提示されることが一般的です。
早期に売却が必要な場合は、現在周辺で売り出されている類似物件と同等、もしくは低い価格で売り出します。 一方、売却期間を長く確保できる場合、市場価格よりも高い価格から売り出していき、購入希望者が現れないときは、徐々に価格を下げていくという手法をとります。
訪問査定時には、希望する売却時期や売却希望額のほか、残債の有無や権利関係なども事細かく不動産会社の担当者へ伝えておく必要があります。
特に買い替えなどの場合は、売却活動の方法が複雑になるので注意が必要です。
また、不動産譲渡税などの税金についても、今回の売却が課税対象となるか、また課税される場合はどの程度の金額が必要か、そして節税対策など活用できないか、この時点で明確にしておきましょう。
ただし、不動産会社の担当者は税金のプロではないため、一般的な相談はできたとしても具体的な税金計算などは受け付けてはくれません。
税金面で不安のある方は、大手不動産会社が定期的に開催する税金相談会などで税理士に直接相談されるか、お近くの税務署でも窓口相談を受け付けていますので、ご利用されることをおすすめします。
なお、リフォームを施すことで売却価格が上がると思われる方がいらっしゃいますが、基本的に事前のリフォームは不要です。
そのリフォームの影響でどの程度価格を上げられるかが不明瞭なうえ、購入検討者のニーズに合致するとも限りません。

媒介契約

Agreement

売出し価格が決定次第、不動産会社と媒介契約を締結し売却活動を開始します。
この媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つの種類があります。それぞれの特徴をみていきましょう。

一般媒介契約

一般媒介契約は、売却活動を複数社に対して一斉に依頼することができます。
一見、成約の確率が高そうにも思えますが、そうとも言い切れません。
不動産会社にとっては、どれだけ広告活動を頑張ったとしても他の不動産会社で成約してしまうリスクがあることに加え、法令上は不動産会社だけが閲覧できるレインズという物件情報媒体への登録義務や売却依頼主への活動報告義務が課せられていません。
不動産仲介手数料は成果報酬であるため、一般媒介契約の物件は、他の媒介契約の物件よりも不動産会社の注力度が低くなる傾向にあります。

専任媒介契約

専任媒介契約では、不動産会社は契約をしてから7日以内にレインズに物件情報を登録する義務と、依頼主に対して売却活動の状況を14日に一度以上のペースで報告する義務が課せられます。
また、この契約は1社の不動産会社としか締結できないため、不動産会社にとっては他での成約リスクがありません。
よって、広告活動なども積極的に行ってくれる傾向にあります。
ただし、依頼主が知り合いなどと、直接に売買契約をする場合に限っては、この不動産会社に仲介してもらう必要がありません。
これを「自己発見型取引」と言います。この契約形態は、双方にとって非常にバランスのとれた設計となっていることから、一番多く採用されています。

専属専任媒介契約

専属専任媒介契約は、不動産会社は契約をしてから5日以内にレインズに物件情報を登録する義務と、依頼主に対して売却活動の状況を7日に一度以上のペースで報告する義務が課せられます。
専任媒介契約との違いは、先ほど登場した自己発見型取引の場合でも、契約した不動産会社に仲介させる必要がある点です。
この契約は双方の制約が多いため、現在はあまり採用されない傾向にあります。

不動産仲介手数料

不動産仲介手数料は、媒介契約時に取り決めを行います。
報酬の支払い時期については、決済時に全額か、もしくは契約時と決済時に半金に分けて支払う方法がありますので、この時点で協議しておきましょう。

売却活動

Sale

売却活動が開始されると、不動産情報サイトや不動産仲介会社が投函するチラシなどに、売出し物件として掲載されます。
購入検討者が現れた場合は、実際のお部屋を内覧してもらい、購入意向があれば「購入申込書」が提出されます。
この購入申込書には、購入検討者の希望購入価格や契約時期などの諸条件が記載されています。
その内容が不服であれば、不動産会社を通じて交渉を行っていきます。

契約締結

Conclusion

契約条件が整い次第、不動産売買契約を行います。
契約に際して、不動産会社から「物件状況等報告書」と「付帯設備表」の記入を依頼されます。
これらの記入に関しては、特に注意深く行ってください。
マンション売却時に特に注意するべきなのが、「契約不適合責任」です。契約条件によっては免責とする場合もありますが、契約書に定められた期限内に請求に発見され請求された欠陥に限り、売主が修繕義務を負うとされています。
ただし、契約時点で物件状況等報告書と付帯設備表に記載されていた欠陥については、事前に買主へ報告していた事実があったとして、修繕義務は課せられません。少々不安があったとしても、後にトラブルが生じない様、契約時に正直に買主へ伝えておきましょう。
また、契約時には買主から手付金を預かります。
手付金は一般的に物件価格の10~20%で設定され、万が一買主側から売買のキャンセルがあった場合は、この手付金を売主が没収することで解決とみなします。
一方で、売主側からキャンセルする場合は、この手付金を返金するうえで、その手付金と同額を買主に対して支払う必要がありますので注意してください。

決済・引渡し

Payment

契約日から1~2ヶ月で決済を行います。
決済では、買主による残代金支払いと引き換えにマンションを引渡します。
引渡しに際しては、残置物がない様注意するほか、掃除などして買主の内覧時点と同様の状態を保つことで、引渡し後のトラブル回避を心がけましょう。

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