杉山社長の本の表紙のイラストを描いた田中マリナさんにインタビュー

カテゴリー:働くステキな女性特集

最終更新日:2022年09月01日

目次

    イラストレーター 田中マリナさん

     
    1993年9月3日 北海道札幌生まれ。中学・高校での美術学科で美術に親しんだ後、食べ歩き好きが高じて食の専門学校に1年。パン屋さんで働きながらコツコツと絵の活動を開始。 現在は大手クライアントを複数抱え、パッケージデザイン、メニュー製作、マップ製作、名刺デザインなど、札幌を拠点に、道内外の企業の広告案件をはじめ、イラストやデザインに関する幅広い活動を行っている。個展も開催し自己発信の活動も広げている。 作品はオフィシャルサイト(https://maribonzu.thebase.in/)で購入可能。販売作品はそれぞれ人気を集めている。 1993 年 北海道札幌生まれ。 2011 年 札幌大谷高等学校美術科卒業 2014 年 フリーランスのイラストレーターとしての活動を開始 現在に至る maribonzu.comInstagram

    ※本文中に出てくるお店や企業は文末Special Thanksにて紹介

    WORLD BOOKCAFEショップカード/くつろぎを本と一緒に(2020年8月) 杉山社長の著書「女性が『不動産』を買うときに読む本」(幻冬社)は“自分の家”を手に入れてより豊かな人生をと頑張る女性たちを中心に、注目を集めています。ここでは、この本の表紙を描いたイラストレーターの田中マリナさんにインタビュー。ご自身のお仕事のこと、お住まいのこと、将来の暮らしへの夢などについてお話を伺いました。

    ずっと描いてみたかった“表紙”の仕事。書店に通って研究も

    ――杉山社長の著書「女性が『不動産』を買うときに読む本」の表紙と挿絵の依頼があったとき、どう思いましたか? 「本の表紙って昔からすごく描いてみたかったんです。それまでは、ある分野の専門誌で表紙を描いたことがあったけれど、大きい出版社から出るような本は今回が初めてで。だから、どんな色合いの本が手に取ってもらいやすいんだろうと、書店に行っておすすめの本のコーナーを見たりして、じっくり研究しました。私に頼んで良かったと思ってもらいたいし、本が売れて、利益が生まれてほしいですからね」

    ――特に苦労されたのはどんなところでしたか。 「コロナ禍で顔を合わせての打ち合わせができなかったこと。これまでは、実際に会うことでその人の好みや雰囲気をつかんだり、話したときの細かい表情などから頭の中にアイデアが浮かぶことが多かったんですが、今回はそうした機会を持てなかったことで、スムーズにいかないこともありました。ネットからの情報や自分の想像だけでは細かいニュアンスがつかみきれなかったことも。ただ、提案後の返事を早くいただけたので、修正も気持ちが新鮮なうちにできて、結果的にはとてもスピーディーに仕事ができたと思います」

    ――不動産購入、資産形成というテーマは新しいチャレンジだったのでは。 「これまでは縁がなかったテーマでしたが、これを機にいろいろ考えることができました。新しい仕事をするにあたり、普段なら見過ごすようなことにも真剣に向き合わないといけないですし、このおかげで自分の中で世界が広がったと思います。今後はもっといろんな本の表紙を描いてみたいと思うようになりました。いつか小説とかも描いてみたいなぁと思います」 北海道のローケーションで描いたポストカード/オフィシャルサイトにて販売

    「北海道を元気にする存在に」。社長公認でイラストの副業スタート

    ――小さい頃から絵を描くことが好きだったのですか。 「はい。中学から美術コースのある私立の学校に行かせてもらいました。中学までは8人でのびのびと美術を学んでいたけれど、高校になると一気に60人くらいに増えて、美術コースは美術学科になったんです。そして、みんな絵が上手すぎて……。人と競うことでやる気がなくなってしまって、より自分が美術をあまり楽しんでいなかった気がします。授業でいい成績を出す子たちのほうが優秀で、自分にはこういう世界は向いていないんだと思って、将来、美術関係の仕事をしようとは考えていませんでした」

    ――当時、ほかに熱中したことなどはありましたか。 「当時は学校よりも習い事に熱心で、小学校から続けた日本舞踊では名取試験に合格しました。食べることにも興味があり、学校帰りに料理教室にも通っていたんです。料理や食べものが好きで、ひとりで東京や神戸などに行って食べ歩きをしている中で、パンが大好きになったんです。高校生の間はずっとパン屋さんかカフェで働きたいと思っていて、卒業してパン屋さんに就職しました。そこでは製造補助と販売、あとは商品を考えたりもしていましたが、慣れない仕事に追われて、パンが大好きでパン屋さんになったという気持ちが少しずつ薄れていってしまったんです」

    ――そのことが絵を描くきっかけになりましたか。 「休日は旅先で気に入った街の絵を描いて、地元の人に話を聞いて、フリーペーパーみたいなものをつくっていました。それを仕事にしようとかはまったく思っていなくて、あくまで趣味で。せっかく絵も描いたし、エッセイも好きだし、何かの形にまとめたいなと思って。そして知り合いのカフェに置いてもらったりしていたんですよ。それが少しずつ広がっていって、仕事のお声がかかるようになったんです」

    ――パン屋さんのお仕事をしながら絵を描くことにしたのですか。 「はい。副業は認められていませんでしたが、イラストや絵を描いてお金をもらってもいいですか?と社長に聞いてみたら、応援するよと言ってくれました。たぶん社長自身がそういう信念でやってきたからだと思いますが、『マリナには北海道を元気にする存在であってほしいから』と言ってもらえて。だから遠慮することなく、仕事が終わったら思いきり絵の活動をすることができました」 ニセコのカフェ「SPROUT」のメニュー/北海道のロケーションをアピールした華やかなメニュー(2019年9月)

    食べ歩き時代のご縁にも支えられ、イラストレーターとして一本立ち

    ――社長の公認を得て、フリーペーパーを描いていたのですね。 「はい。でもそれが観光協会さんの目に留まって、大きめのお仕事をいただいて、パン屋さんとの両立が難しくなってしまったんです。仕事が終わってからバスでその街に行って、100数店舗を取材して、絵を描くという大きい仕事でした。パソコンもできないのに、イラストレーターのソフトを使ってデザインするくらいのレベルまで求められていて。でも、これはチャンス!と思ったから、やったこともないのに、できる前提で引き受けてました(笑)。それで勉強することも急に増えて、このままだとどちらも中途半端になるなと思って。パン屋さんの会社はボーナスもあって安定していたと思うけれど、絵を描く仕事をやっていきたいなと思って、パン屋さんをやめることにしました」

    ――未経験だったパソコンはどのようにマスターしたのですか。 「食べ歩きをしていた頃に出会ったママのお店の、常連のお客さんが、デザイン会社の社長さんで、その会社に遊びに行って、パソコンの使い方を教えてもらいました。まだパン屋さんの仕事をしているときも、夜、仕事終わってから行ったりして、観光協会の仕事もなんとかクリアすることができました。人に恵まれているとよく言われるんですが、私が変わり者だから、気になってくれていたのかもしれません(笑)」

    ――救いの手を差し伸べてくれる人がいたのですね。 「パン屋さんを辞めたときも、パン屋さんと関わりのあったコーヒー屋さんが手を差し伸べてくれました。私の活動のことを知って『よかったらうちで働いてもらって、それが絵の仕事の手助けになれば』と言ってくださったんです。イラストの仕事をしながら、休みたいときは休んでいいからとの言葉に甘えて、週に1〜2回、短時間だけ働かせてもらいました。一緒に働くスタッフも最初から理解してくれたので働きやすかったですね。絵の仕事が増えて大変になってきたので、コーヒー屋さんを辞めて、イラストレーターとして一本立ちすることができました」

    JRタワー日航ホテル「lobby gallery」/作品を展示。やさしさとくつろぎを(2020年9月~12月)

    イラストに加え、今はアート作品も。今年中に自分のアトリエが欲しい

    ――就職して2年後に専業のイラストレーターになったのですね。 「やるぞ!みたいな強い気持ちがあったわけではないけれど、自然な流れでここまで来ました。食べ歩きの趣味やパン屋さんでの仕事のつながりもあり、最初の頃はカフェのメニューや看板を描いてほしいといったご要望が多くて、今も引き続き、食に関するイラストのオーダーをたくさんいただいています。そして北海道で活動しているということもあり、リゾート、観光系のお仕事もいただくようになってきました」

    ――イラスト以外の活動もスタートされたとか。 「最近はデザイン、イラストだけでなく、アート作品もつくるようになって、それをホテルなどに展示させていただいて、うれしいことに作品を買っていただけるようになりました。自由につくってみたら、受け入れてくださる方が意外と多くて、今後はこちらのジャンルも極めていきたいと思っています。だから今、アトリエが欲しいんですよね。アート作品をつくるには、木をカットするなど広いスペースが必要な作業も多いので。今年中に自分のアトリエを持ちたいと思っていて、今年はたぶん仕事環境について考えることがメインになる気がします」

    (写真左)美唄アルテピアッツァ、(写真右)クロスホテル/道内の各ホテルにも作品を展示(2020年10月)

    仕事は体調に左右される。だからなるべくリラックスできる生活を

    ――オフィスとお住まいは分けていますか。 「今は共同の事務所を借り、そこから徒歩10分もかからない場所に住まいを移したばかり。家の中で仕事をするのが苦手なので、仕事場は分けています。家と仕事場を一緒にすれば、同じ家賃でもっといい家に住めると思うんですが、家はソファとかリラックスする家具ばかりで、家に入った瞬間、仕事をする気にならないから(笑)」

    ――引っ越しをしてどのような変化がありましたか。 「以前より狭くなった代わりに、さらに立地が便利になりました。インテリアがすごい好きで、前は広めの家に住んでいたんですけど、いいなと思った家具とかを衝動買いしちゃったりするので……。これからはもっと吟味して、いい家具を少しずつ揃えていこうと思って、あえて狭いところにしました。コンパクトな部屋で、いい家具をきちんと揃えたら、ホテルみたいな感覚で住めるなと思って。今は満足しているけれど、また広いところに引っ越したくなるかもしれません(笑)」

    ――今、オーダー家具をつくっていらっしゃるとか。 「はい。とても楽しみにしているんです。家具にお金をかければ、内装がどんなであっても格好よくなると思うんですよね。北海道はオーダー家具屋さんが多くて、実は今回のオーダー家具は2つめ。1つ目は2人掛けソファ、今回はキャビネットをオーダーしていて、どちらも20万円くらい。数カ月かかりますが、待つのも楽しみ。1年に1回のごほうび、ということにしています」

    ――リラックスできるお部屋になりそうですね。 「仕事は自分のメンタルの変化にとても敏感に左右されてしまうんですよね。体調が悪いと、いいアイデアも思い浮かばないから、本当はもっとリラックスできる生活がしたい。たまにカフェでゆっくり本を読んでいる人を見ると羨ましくなります。私も本をたくさん買うし、毎日カフェに行くけれど、そこでも思いついたアイデアを書き殴ったりとか、仕事をしてしまう。仕事があるのはうれしいことなんですけど、いつもそのことばかり考えていると、かえってアイデアが浮かびづらい状態をつくってしまいますね。もっと頭の中に空白の時間をつくってあげないと、ですね」

    田舎と街中に家2つが理想。古い建物をおしゃれにリノベしてみたい

    ――頭の中に空白の時間をつくるために工夫されていることはありますか。 「ときどき場所を変えることも大事にしています。住まい選びは便利さ重視で札幌の中心部にしたけれど、あまり街中にばかりいると体に良くないような気がして……。ニセコに友人も多いので、定期的に出向いて自然を感じるようにしています。最近は行けていないので、そろそろまた東京にも行きたいなぁ。ニセコみたいに自然豊かな環境と、東京みたいにいろんな情報がぎゅっと集まっている環境と、その中間くらいの札幌。全部バランスよく自分の中に取り入れていきたいなと思っているんですけどね。今は東京の刺激が足りない!(笑)」

    ――将来の住まいについては、どのように考えていますか。 「まだよくわからないけれど、大きな希望を言うと、家が2つ欲しい。田舎と街中に。札幌は街中でも落ち着ける場所がたくさんあって、よくできた都会だなと思います。札幌のことは、これからもきっと好きでしょうね。でも東京に家があってもいいかなとも思うし、友人には海外に住んでみたいという人もいて、そういうのもいいなと思いますね」

    ――理想とする家は、どんな家ですか。 「実家の影響もあり、間仕切りの少ない家で暮らしたいと思っていますね。親は子どもたちが引きこもりにならないようにと、注文住宅で間仕切りのない家を建てました。扉があるのはトイレとお風呂くらいで、広くて、どこにいてもみんなが一緒にいるような感覚の家でした。だからなのか、広いワンルームの部屋に憧れるし、今も結局扉を開けっ放しでワンルームみたいにして住んでいますね。そして今、リノベーションにも興味があります。カフェをやっている友人とかも古い建物をリノベしておしゃれな建物にしているので、いつかやってみたい。その前に自分の家を手に入れないとですね(笑)」 ※このインタビューは2021年1月に行われました。田中さんは同年4月より個人アトリエを設け、そちらで制作活動を続けています。

     
    編集後記
     
    周囲の人が自然と巻き込まれてしまう、不思議な魅力の持ち主 パン屋さんからイラストレーターへ。異業種への転身のようにも聞こえるプロフィールですが、そこで出会った人、学んだことがすべて今へとつながり、活かされている……。田中マリナさんには、周囲の人を動かすというより、関わった人が自然と巻き込まれてしまう、そんな不思議な魅力が備わっているかのようでした。これからも人の心を動かす作品をたくさん世に送り出していってくださいね。
     
    取材・文/前川ミチコ 編集/WOMANESTATE編集部
     
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